アクセル・ジャンプへの道(Part1)

私の場合、始める前はフィギュア・スケートよりもむしろスピード・スケートに興味があったのだが、
前進方向に滑走してジャンプするジャンプを身につけたかった。
半年程でスリー・ジャンプ(ワルツ・ジャンプ)は出来る様になったが、走り高跳びをやったことがある
自分にとっては、もっと高く跳びたいと思う様になった。
ベリーロールで跳んでいたのだけど、これも半回転程の技で、共通点を感じる。
ただ、走り高跳び並みに体を持ち上げるには、どうしても回転を伴うので、回転の知識もスキルも
全くなく、正式に習うつもりのない私は、気長に3〜5年計画で、全技術を独自に分析して技術を
完成させるということを目標にやってきた。
始めたのが長野オリンピックの直後なので、ソルトレイクの今年は丁度4年目になる。
当時正に競技会の選手は雲の上の存在であり、習っている小さな子供も当然自分より相当上手いので、
悔しいといえば悔しいけど、そういう気持ちすら起きないくらい差は大きく感じられた。
私自身、恐らく見た目にはかなり若く見えるだろうが、始めたのは既にスポーツ選手なら引退を
考える頃だ。お腹に体脂肪が付き始めると気持ちも若さを失うようなのだ。
しかし、現在自分の体力は小中学生くらいの頃の感覚に戻っている。
小学生の子供を持つお父さんが子供の運動会に出て筋肉痛で苦しむ、のにも似て、筋肉を鍛え直すのに
筋肉痛が何度も何度も繰り替えされた。
筋肉増強ホルモンが出ると、その晩は体温が上がり、ホテって眠れないくらいになる。
筋肉痛の予防と治療は、ビタミンB剤が有効なのできつい運動になる時はこれを飲んで随分と筋肉痛を
防ぐことが出来た。
最近は、スケーティングで深いフォームになったとき、ぶよぶよのお腹が腿にぺたっと張り付くような
感じが嫌で、そんなに太っている訳ではないけれど、食事量を減らして2ヶ月程で5kg減量して
体も随分軽くなっている。

さて、始めるに当って、まだ後方滑走すら出来ない滑り始めの頃に、スリー・ジャンプを行うのにどういう
技術が必要なのか考えてみた。
まず、片足滑走出来て、踏み切りはアウト・サイド・エッジに乗ってやる。次に、着氷は前進では危険そう
なので、やはりバックは必要だろう。バックするには、ターンも必要だ。
ということで、この辺りを練習することにした。
これだけでも随分身につけなければならないことがあり、どれも出来る様になる保証はなかった。
ジャンプの回転方向を逆にした一番の理由は、走り高跳びで右足踏み切りしていたことが大きな理由だが、
リンクの周回滑走では左回りに偏り過ぎるので逆回転だと丁度左右のバランスが取れるだろう
ということも考慮してのことだ。
回転方向が逆なのは不便なことも多いが、リンクの隅で練習するには、周回する人の流れの方向と
中央に出た時の方向が一致するのでそんなに悪くはないと思った。
恐らく時計回りは、競技会に出ると相当不利な扱いを受けるだろう。逆回りだと、トウ・ループと
フリップの足も逆になり、ジャッジによっては慣れないために即座に見分けられなかったりするだろう。

スリー・ジャンプに関しては、初期に相当なこだわりがあった。
スケート教室で教えているものは、エッジが浅く、直線的でスリー・ジャンプとは呼べないと・・・
しかも、滑り止めにトウ・ピックを意図的に突き刺している気がする。
スリー・ジャンプは完全なエッジジャンプでなければならない。
フィギュア・スケートの曲線モチーフを生かすには、アプローチ・カーブが深くなくてはならない。
当然深いエッジで滑る必要がある。ということで小円をクロス・オーバーで出来る限り体を傾けて
スピードを保って滑る練習も繰り返した。

バックに関しては、後ろに進むのが怖くて、少しも進まない人だった。
無意識に後ろに進むのを止める様に踏ん張ってしまう。
前進滑走のV時ストロークを後方に置き換えて少し曲線的にしたイメージで滑るのをイメージしながら
もがいていたら恐怖心も消えて自然に滑れる様になった。でも、ひょうたんバックはバック滑走がほほ
完成するまで出来なかったから妙なものだ。普通はひょうたんバックからだろう・・・

ターンについては、片足は難しいだろうと思って、両足ターンのモホークを練習していたけど、
筋力が付いて来て踏ん張れる様になるとスリー・ターンの方が楽になって来た。
モホークの練習では、本を読んで学んだためタイミング・スケールが全く分らず、0.2秒くらいで
やるべきを1秒くらいかけてやって出来ないと思っていたこともあった。
スリー・ターンの練習は、出来る様になるまでとても苦手で嫌なものだった。
元気の源を吸い取られるように、精神的にもどっと疲れてくる。
上手く行かないのが原因なのだが、筋力不足が大きいと思った。
スリー・ターンも深くなくてはならない。
大きい動作で抑揚がつけられないとステップとしての魅力が半減する。
それは、その演技を見ている人より滑走している人の満足感を損なう。
でも、3の字になるくらいの深いターンはなかなか難しい。
ターンの頂点に達してからその後どういう方向に抜けるかという調整は、遠心力をエッジで
適切に受ける感覚を養う上で大切だ。

スリー・ターンが出来る様になると、今度はそれをジャンプに置き換えなくてはならない。
恐らく、ターンの勢いが余って外側に飛び出してしまうのがジャンプだろうと考えていたが
実際その推測は正しかった。
しかし、ジャンプするきっかけが何なのか分らない。
ジャンプは、円周トレースを乗り越えなければならないが、エッジを深くすればする程乗り越え
にくくなる。
トレースを乗り越えるには、フリーレッグの振り出しが必要で、振り出すためにはある程度の
エッジグリップが必要。円周の外側に踏ん張るための力が必要なのだ。
スリー・ターンと同様にトレースを曲率が大きなカーブに絞り込み、それによってグリップを得る
というのがきっかけといえばきっかけになる。
そのためには、今まで以上にエッジを傾けることと、それを助けるために上半身を捻ること。
これがフリー・レッグの振り出しを支えることになる。
私のフォームでは、エッジ・グリップに大きく貢献しているのは、フリー・レッグの振り出しなのだけど
これは相当な反動を伴うので振り出し時にエッジがそれを受けられる体制にないといけない。
きっかけというか、エッジ・グリップの種みたいなものだ。

スリージャンプの最初の着氷は、腿の付け根にズシンと来た。
結構な荷重だ。トウピックを下に向けて、着氷をトウで捉えてから降りるようにしないと、いきなり
エッジではつらいかも。足を完全に伸ばしていると腿の根元を直撃するので、
やや足は曲げ加減な方がいいと思った。

ここまでで、何とかスリー・ジャンプらしきものが出来る様になったのだが、まだ踏み切りの
エッジ・グリップが不安定だった。満足が行かない。
当時は何も知らなかったので、カーブの曲率を適当に選べば最適なものが見つかるに違いないと思って
色々やっていたけど、想定した範囲にはなかった。



結局想定した範囲は、上図黒で、実際は赤い曲線でないと安定しなかった。
このカーブは、、アクセル・ジャンプでよく見るバックから振り返って踏み替えるタイプのアプローチで
容易に実現出来るようなので、最初はこれを多用した。
このアプローチ方法だと何も意識しなくても必要な要素が無意識に揃ってしまう。
この赤いカーブに乗るようになった当時、既に右足はかなり左に押し込むようになっていたのだが、
それが基礎として重要だとは気付いていなかった。
当時身につけていた技は、振り込み動作のない自然滑走だったのだ。

スリージャンプが出来る様になってから、自分のフォームなどを客観的に見る必要性が出て来たと思う。
この頃から定期的にビデオ撮影してフォームをチェックする様になって来た。
しかし、いつも撮影する訳には行かないので、何をチェックするかというと氷に残ったトレスだ。
コジていないかとか、角度はどうかとか。コンタクトレンズを落した人の様に氷り面をずっと見つめて。
このとき、自分のトレスを探すのに、時計回りの場合見つけ易いという利点があった。
で、自分は本当にエッジジャンプしているかというと、踏み切り位置にトウピックの跡が氷に残っていた。
でも感覚的にはほとんどエッジジャンプなのだが・・・

ここで一つの決心をする。
「ちょっと不安もあるが、一番下のトウ・ピックを削り落してしまえ・・・」
トウ・ループには影響はなさそうだ。
コンパルソリー用のブレードと思えばいい。
当時は、6,000円くらいのSLM社製のブレードで、普段の滑走でも石につまづくように
トウ・ピックを引っ掛けて転ぶことがあった。
ちなみに現在は、コロネーションACEだが、これはコンパルソリー用にしてもいいくらいに邪魔に
ならないと思う。
で、ヤスリで一番下のトウピックを削り落した。
確認したところ、削ってからもスリージャンプは普通に出来ている。
取りあえず、スリー・ジャンプが完全なエッジ・ジャンプだというのは証明出来た。

スリー・ジャンプが出来る様になって、次はアクセルか?
と考えて挑戦もしたが、自分はきちんとした指導を受けている訳でもなく回転の知識もスキルもないので
かなり無謀なことだと思っていた。
良い選手の演技を目に焼きつけるくらい見てイメージを確保してやると案外できるもので、そういう
感覚的なハンドリングでスリージャンプが出来る様になってから3ヶ月くらいで、まぐれによる成功は
2回程出来ている。
しかし、こういう場合練習すればする程悪い方向に行く。
現在思うに、空中で軸を作るというスキルは、やはりスピンで身につけるものだと思う。
高速なスクラッチスピンが出来る子は、アクセルの習得も早い。
下手をするといつ空中分解するか分らない私の場合は、無謀でしかなかった。
勇気がない・・という言い方は出来なかった。
で、そのスキルを身につけるのにロクロスピンが役立ったのだ。
実際、回れる様になったきっかけは、ロクロによる踏ん張るための筋力トレーニングのお陰だろう。
これがなかったら、自分のアクセルはなかったと思う。
アクセルに挑戦していい回転の技術レベルは、
 トラベリングしてもいいから、6回転スピンで回れること。
という程度だと思う。
余談になるが、私の見解では、1回転ジャンプはまだ回転にあらず。
半回転+半回転で1回転していない。
よって、アクセルの1.5回転から本当の回転になる。

当時、地上練習を色々と試みたが、結局空中で軸を作る試みは失敗している。
地上での踏み切りは自由過ぎて、地上でうまく行っても氷の上では出来ないことが多い。
(ただし、氷の上での経験がある人は、有効な地上練習をやっているようだ)
今思えば、地上でも回そうとするよりも腿の振り上げなどの反動を無理がない形に回転に
持って行き自然に回るという発想の方が重要に感じる。
しかし、何より回転のスキルは空中分解しないように、腰と肩の回転モーメントを等しくバランスを
取るかにある。

ということで、当面アクセルは諦めて、1回転の後方踏み切りジャンプを練習することにした。
スリー・ジャンプは、スリー・ジャンプとしての完成度を高めるべきだと。
その一つとして、高さを追求したのが、ジャンプ・ページに置いたスリー・ジャンプの演技だ。
腕を後ろに大きく引いて、動作そのものも大きい。
現在は、あれ以上に高くジャンプ出来ると思う。

しかし、ここからアクセルに対してはスランプが続く訳だ。
後方1回転ジャンプが出来る様になってくると、アクセルでも回転力が余る様になる。
無駄な回転をしないようにフォームが固まってくるとアクセルに向かうには悪い傾向が出て来るのだ。
どんどんアクセルに挑戦するのが怖くなってくる。
丁度この頃、靴が傷みかけて特に深いエッジで滑っていたRFOが支えられなくなっており
ある角度以上傾けるとガタッとくるので次第にエッジも浅くなっていたがそれに気づいていなかった。
靴を交換した時には、かなり悪い癖がついていたと思う。
この頃、ほぼ直立に近い状態での遠心力の踏ん張りが足りないことに気づき、そのための練習を
していたが、浅いエッジでもかなり強い遠心力を強く受けられることに気づいた。
そういった理由で、浅いエッジでの練習に重点が置かれる様になって来た。

ここからのアクセルへの挑戦は、またもや無謀とも壮絶とも言えるものになっていた。
端から見て危険きわまりないが、取りあえずどんな体制で転んでもほとんどノー・ダメージで
転べる様になり、回転についてはロクロ・スピンなどにより制御方法が分かって来たので
回転軸が空中分解することはなくなった。
当面の問題点は、
1. スリー・ジャンプとの違いは何か
2. 恐怖心が何によって起っているか
ということで、アメリカのWebサイトの解説や自分の持っている範囲の書籍で調べたが、
アクセル・ジャンプは、スリー・ジャンプと何ら変わらない。
という風にしか書かていないし、現にちょっと見ただけでは違いは分らない。
同じだとすると自分の理想とするスリー・ジャンプが間違っているのかと考えたりもするが、
習っている人達もスリー・ジャンプからアクセルにはなかなか進めない訳で、
明確な違いがその2つにあると考えた方が自然だと思う。
よって、この違いが理解出来るまでは絶対にアクセルには進まないというくらいの気持ちで
挑むことにした。
元々、あらゆる方法を試すくらいのやみくもな練習で、色々やってみてその中から有効なものを
選ぼうと考えていたが、ある程度の技になると、ちょっとやっただけでは、それが本当に原理的に
間違っていて出来ないのかは分らず、間違った技でも練習して思った形に仕上げなくてはならず、
相当な時間を要している。
ほぼ週1日の枠の中でやるしかないので1つ試すのに3週間とかかかるくらい。
もう思いつきで試せる段階にはないということなのだ。
そもそも、人間の知覚は1つのことしか一度に認識でない訳で、頭で考えてやろうとするとあちらを
立ててればこちらが立たず・・・、フィギュア・スケートの技が難しい一つの大きな理由はそこにある。
だから、無意識で総合的に捉えるためにイメージ・トレーニングするのだ。
実際に、悪い状況程、自分が何をどうしているか状況の把握が出来ていない。
スリー・ジャンプを基礎にして、アクセルをやったつもりで失敗してるという状況を
色々な要素に関してまず知覚して、それを整理して状況把握しなければならないと思った。
そして、それぞれについて少し変えてみたり、別のうまく行きそうな発想に置き換えたりして
徐々に成功への道が開けて来たと思う。
ここまでやると、癖なんかないです。
「悪い癖がついてあの人はおしまいだ」とかいうことも聞くけれど、良いところも悪いところも
みんな壊して再構築する作業になるのでそんな心配すらなくなるくらいに。

駄目でもいいから、まずスリージャンプのフォームからアクセルをイメージして跳んでみた。
前々から思っているのだが、自分の自己流と違って本式のフィギュア・スケート教習では
エッジに常に遠心力を受けるようなことを基礎としているように思う。
私は、自分流の受け流し的クリーンな滑走が大好きなので、エッジで力を受けるのは、
種々のターン動作と、ストップとジャンプとスピンの時くらいなのだ。
で、やはり漠然とアクセルをしようとすると、フォームはスリー・ジャンプなので、
無理に回そうとしているのが明白。
それも踏み切りよりかなり前から回すという悪い傾向が出ているし、そのために
回転軸が背中に回り込んだ様な不安定な状態に追い込まれることになっている。
エッジが浅かった頃は、これに加えて踏み切り足が取り残される感じもあり、更に不安定で、
これら恐怖心の原因となっていたのは間違いない。

大切なのは、エッジ・グリップであり、エッジ・グリップがない状態で回そうとするということろが
駄目なのだ。本当は、わかり切ったことだけど、スリー・ジャンプを元にするという出発点から
それを振り返ることが出来なかった。

ここで、エッジグリップを如何にして得るかということが問題になるが、直立状態では、重心を
エッジの乗り位置に完全に乗せること。
カーブでは、遠心力を考慮した上で適切な体の傾きをもって体重と遠心力の合力がエッジに最大に
かかるようになるようにすること。これが基礎となる。
ただし、遠心力が伴う場合、体を伸ばしたまま素直に傾けたのでは、十分な荷重がエッジに降りない。
これに関しては、後で述べる「く」の字型フォームが適切だと思う。
あと、エッジ・グリップを支えるのは、アプローチ・カーブに踏み替えで入る時の踏み込みの加速と、
体の捻りや回転をエッジで受ける力がある。
アクセル・ジャンプでは、更にフリー・レッグの振り出しも大きなグリップ力となる。

この辺りのことを考えている時、ふと矛盾を感じたことがある。
ある時点まで私は、「カーブの方向と逆回転に体を捻るとエッジがグリップする」と考えていた。
しかし、これは間違いであった。ループ・ジャンプではそうならないのだ。
スリー・ジャンプでは、アプローチカーブと反対側に上半身をチェックすることで、エッジ・
グリップが得られていたのは確かなことだ。
しかし、ループジャンプが直線滑走からいきなりアプローチに入れる様になってみると逆方向に
捻っていることに気づいた。これをどう説明しようか?
例えば、体を右に回す時、エッジはどちらに踏ん張るか?
一体、何を基準にそれを考えればいいのか?
力学(物理)の鋼体の運動の説明によると、物体の運動は、重心位置の直線運動と重心を中心とする
回転運動の2つに分けられるということだ。
従って、この考え方を適用すると重心軸を中心に回転とエッジの位置を考えればいいことになる。
そう考えると、スリージャンプのときは、エッジが重心より前にあるためアプローチ・カーブと逆に
体を捻るとグリップが得られる。
ループ・ジャンプのときは、エッジは重心より後ろにあるからアプローチ・カーブの方向に捻ると
グリップする。という結論が出た。



どらも、捻る場合は予め反対方向に十分にチェックしていなければならず、スケートの場合は
逆戻りして回転を溜めることが出来ないので。予め半回転ターンか、1回転してその際に逆に捻るべき
部分を残す形で回転を溜めることになる。
これは、地上で生活する時とのギャップを感じる典型的な例である。

エッジ・グリップが重要だという認識で、次に何をするか?
フィギュア・スケートらしい曲線モチーフを生かしてジャンプするという前提を壊さない様に・・・
この時点で、スリー・ジャンプとアクセルの違いとして浮上して来たのは、踏み切りタイミングだった。
そして、そのタイミングを大きく乱すのはフリーレッグの振り込みだった。
ということで、振り込みなしでも1.5回転回れるだろうという推測の元アプローチ・カーブの
絞り込みだけで跳ぼうと思った。
とはいえ、ある時点では、腿の振り込みがある状態で正しくアクセルを回っていたこともあるのだ。
既に忘れている為に再現出来ないが。
また、現在の論点は、スリー・ジャンプからアクセル・ジャンプへということだから事情も異なる。
以前、2回程、色々なバリエーションを試す中で、ある程度のスピードでフリー・レッグを無理矢理
振り込んでエッジがグリップして非常に安定してアクセル・ジャンプが成功したことが何度かある。
スケーティングレッグは、かなり反対側に押し込んでいたと思う。
タイミング的にも余裕があったと思う。少しズレても成功しただろう。
確かに、このジャンプは安定という点では凄いが、フィギュア・スケートらしくない。
リンクで見かける上級者は、こんなこんな重いジャンプをしているが、ある意味力の使い過ぎに思う。
それに振り込みが決め打ちに近いので失敗するとエッジが汚くなる。ジャッと音を立ててジャンプするのだ。
自分が理想とするのは、あくまで自然にアプローチカーブに乗っていなければならない。
そういう意味で、振り出しで急激なカーブを作るのではなく、もっと緩いタイミングで
体の傾きや捻りを使ってアプローチカーブを絞り込む必要があった。
そのために必要なのはエッジが深い動作なのだ。
危険な練習に見兼ねて、あるインストラクターやその生徒がやって見せてくれることもあったのだけど、
想定しているアプローチカーブが全然違うので参考にならない。
それに、ここまで真剣に考えて来た自分から見れば、その教え方も十分な技術要素を指導出来て
いない様にも見える。形から教える方法では、自分の問題は解決出来ないのだ。

アプローチ・カーブの絞り込みだけで跳ぶというのも、最も有効だった振り返り型のアプーチも
型くずれして使い物にならず、それを直す方法もない今、手がかりとしては滑らかにカーブを絞り込む
インサイド・アクセルくらいだった。これは一時的にかなりの成功率で出来ていた技だ。
しかし、これがまた再現出来ない。
踏み替えでやったところ出来る時と出来ない時の違いが全く分らない。
そんな中、S字から入って侵入する際に体を大きく左に傾けて入り、エッジをチェンジしたら
今度は大きく右に傾ける感じにすると上手く行くことが分かった。
このときのインサイド・アクセルのモチーフは、フォーワード・カウンター・ジャンプとでもいうような
感じだった。
カウンター動作は比較的得意なエッジ・ワークなので、これはいいと感じていた。
実際、この練習をするようになってから片足でのルッツを同じ曲線イメージで実現したのだから。
この練習をする時に、S字からターンしてジャンプするとそのままループ・ジャンプになる感覚を
得ていたので、それを踏ん張って前進で踏み切れば空中で半回転ターンして残りはループ・ジャンプな
感じでいいと確信していた。
踏み替えによる方法では、踏み切り足の遠心力の受け方に注意しなければならなかった。
アプローチは、左に大きく踏み出して、その加速はエッジ・グリップに使用する。
それを支えるためにサルコウと同様にインサイドで重心を円周の内側に押さえ込むのだ。
そしてジャンプのバネを貯えるために膝を曲げて体を低く構える。
これらを踏まえて、フォームを調整した。
そしたら、訳が分らず出来ないというのが消え確実になった。
ただし、動作がカウンター動作で踏み切りタイミングが遅いので、エッジ・グリップは
正に引っ掛ける様な感じになっていた。
しかし、きちんと着氷出来る様になってから整えるとエッジ・グリップさせないで
正しいエッジ・ジャンプに直せることも分かった。

丁度この頃、ある人から指導を受けることが出来た。
その昔、新聞社の主催でフィギュア・スケートの指導をして飯を食っていたという。
でも、現役のインストラクターくらい教え方はしっかりしていた。
ほとんどが、自分の考え方に反しないので実質は素直に聞けたが、
当面は自分の問題を解決してくれそうにないので、技の一つとして習っておこうと思った。
そこで習った姿勢は、フィギュア・スケートというよりもスピード・スケートやプレーンな
スケーティングに属するものではないかと思った。もしかしたら、この指導は時代遅れかも?
しかし、基礎だというのだから基礎なのだろう。
後で振り返って、開き腰と呼ばれる悪い状態が実質的にどういう意味なのか理解出来たし
スケートの教本でスケーティングレッグに乗ることを基礎としている教え方からすると
なる程と思う内容だった。しかし、説明は理詰めで考える私から見ると随分と
矛盾を持っていた。特にフリーレッグの振り出しに関して、コンパスだと言っていたけど
振り出すきかけがどこにあるのか、何で支えているかの説明はなかった。
まあ、説明というものは方便なので仕方がない。それに反論しても屁理屈になるだけだし
、 とにかく素直に聞いておくことにした。
また、アクセルの指導として教えてもらったフォームも私のスリー・ジャンプではきちんと
出来ていることだったのだ。
腰と腿の付け根とでペン挟まるようにするのが、良い姿勢らしい。
新聞記事をスクラップした資料で確認すると少なくともスピードスケートでは、
その形にがっちりとフォームが組まれている。
スケート教室ではほとんど見ない形だけに、本当にフィギュアスケートの指導なのか疑った。
基礎であるなら、典型的にそうやっている模範生徒くらい見かけるだろうと思うが。
まあ、背筋を伸ばすことが一番に言われるので、競技会でもフィギュア・スケートで
見てそう思うのは、バックのクロスオーバーのときくらいか。
この時の指導でちょっと驚いたのは、かなり前傾姿勢でいいのだということ。
姿勢に関しては、ずっと前傾姿勢であるべきだと思って来たが、前傾にするために猫背で
あるということでこれを否定していなかった。空中で軸を作るには不利になるが
取り敢えず1.5回転ならギリギリできるだろうくらいの見積もりだった。
しかし、最近2回転の域に達しているループ・ジャンプで背筋を伸ばすことが、
回転軸だけでなく、ジャンプそのものに驚異的に効果があることを実感して
背筋を伸ばして前傾姿勢を保つようにしている。
で、その姿勢がスピードスケートの低姿勢とあまり変わらないということに気づいた。
元々ほ乳類は、四つん這いになって行動する動物であり、進化の歴史からすれば
人間も直立してから間もないので、運動性能を発揮して、特に腿の筋肉を有効利用しようと
思ったら四つん這いに近い姿勢になる必要があると解釈するのが自然だ。
余談になるが、腰骨と大腿骨のモデルを作成して、習ったフォームの骨格図を作ってみた。

 

左図が普通に立った状態。
骨格を見ると股関節の支持位置は、横から見てその中央にあるのではなく、かなり前に偏って
いるということが分る。このため直立状態の股関節は、後ろに振り切っていて更に
背骨の荷重がそれを押さえている。
重心もこのままだと後ろに傾くので、背骨が前に出てくるように彎曲するか猫背になる。
右図のようにすると、股関節を中心に背を後ろにも回せる様になる。背筋を真直ぐ伸ばした
状態でもバランスが取れる。背筋を伸ばし腿の筋肉を使って股関節だけによる回転で運動する
ということは、強力であり制御も容易だということだ。

話は戻って元インストラクターの人による特別教習だが、自分の問題解決にはならなかったものの、
これに値段をつけるとしたら30分程で6,000円くらいか?
結果論からすれば、それくらい払う価値はあると思うがなかなか信用もできなくて・・・。

これを期に私は、セミ・スピードの靴でスピードスケートを練習してみることを思い付いた。
フィギュア靴にセミ・スピードのブレードをつけたものだ。
そして、これによって自分の滑走が9mmの丸砥石による溝の付いたエッジだから支えられたので
エッジを押す角度や乗り方が不適切だということを思い知った。
まあ、グリップしてそれで支えられるのならそれでもいいという考え方もできる。
しかし、最適化を考えるならば、急カーブは無理だけど、V字ストロークやクロスオーバーでは
セミ・スピード靴でもきちんと受けられなければならない。
これによって、エッジの受けの問題があることを知ったが、このブレードを取り付けた靴が
古い靴だったのでRFOに乗れないことを再認識した。
また、これが恐怖心の一つの原因であることを後に知ることになった。
履き方を工夫してヒモをしっかり縛れば問題ないが、フィギュアの貸し靴のへたったものみたいに
不安定だった。
ちなみに、今のフィギュア靴に履きかえてもこの靴でついたと思われる癖が残っていることに気づいた。
どうやらRBOに十分に乗れていないままアクセルジャンプをしようとしていたらしい。
とはいえ、スリー・ジャンプなら十分なのだけど。
そういう訳で、スリー・ジャンプとアクセル・ジャンプの違いの一つがハッキリした訳だ。
セミ・スピード靴での滑走は、本当に良かったと思う。
前傾姿勢で重心を乗り足のエッジに被せた時のグリップの強さにこれまた驚いた。
これは、アクセル・ジャンプの時にも言える。
フィギュア靴にセミ・スピードブレードをつけたものでもスリー・ジャンプは出来る様になったが
その時にエッジ・グリップを得るには重心を前にかぶせる必要があった。
セミ・スピード・ブレードで滑った後にフィギュアのブレードで滑ると、氷に根が生えた様に
エッジが氷に食い込む。こういう滑走はクリーンとは呼べないので好きではないが、
ジャンプには必要だと感じた。

ジャンプには、他にも色々な要素が必要になる。
例えば、練習過程で前進着氷は必要かとか、無理してエッジで降りるべきかとか・・・
前進着氷には腕を前に伸ばした安全な方法があるようだが、私がインサイド・アクセルで経験した
感じでは、十分な滞空時間と回転があれば自然とエッジで降りられるもので、トウで降りて回転に
過不足があった場合は着氷してからその回転を受け流す様にすべきだと思う。
今のところ、2回転の練習では、足首の怪我の心配は全くないと思っている。
ただし、無理にエッジで降りようとしたら怪我をするかも。
一番危険なのは、軸が背中に回り込んだり、ツルンと滑る様な受け方で傾いた軸を踏ん張って
立てようとすることだ。ジャンプそのものがしっかりと軸を持ち空中分解しないなら、
軸の角度を保ったまま着氷して受け流すことができる。
だから、取り敢えずそうしておいて、十分な回転が得られてチェックで回転を止める余裕が
出来てからきちんと降りればいいと思う。
跳び上がることには勇気が要るが、最近は、ループ・ジャンプやトウ・ループ・ジャンプが
恐怖感なく軽く2回転近く回ってしまうこともあり、ランディングが両足だったりするけれど
本当に怖い経験をしなくなった。
スピードを出して怖いのは、やはりそのカーブに乗れていないということだから、スピードによる
スケーリングをきちんとやって乗れる様にしないと、それを勇気だけで乗り切るのは無謀かもしれない。

さて、インサイド・アクセルがほぼ出来る様になって、これをアクセルに置き換えようとしたが
踏み替えの方式では出来ないし、S字カーブによるアプローチも弱い。
どちらかというとS字カーブから入る方法がいいけれど何かまだ中途半端だ。
やはり、フリー・レッグの振り込みの問題がまだ引っ掛かるのだ。
ジャンプの制動を考えると、体制は仰向けになるくらいがいいと思うのだが、そうするとエッジ・
グリップが弱くなってしまう。
エッジは仰向けの場合と同様にして重心をかぶせる形にする必要があり、結局それを両立させると
思い付く範囲では、両腕を思いっきり後ろに引いたスリー・ジャンプのフォームになる。
そうなると振り出しに戻る・・・といった感じだ。
ただし、もっと意図的に重心かぶせをやって、ルッツの様に急激な捻りを加えると前進のルッツ
みたいな形で楽に1.5回転させることができた。
これはこれで魅力的だが、これは肩と腕を回すので普通のアクセルではない。
振り込み要素が少ないので今のやり方でも出来たのだ。

ここでもう一度振り返ってみると、やはりエッジに正しく乗れていないということを重点的に直すしか
ないと思った。
しかし、ニの字ストップのような、仰向けになるような制動も出来るし、ほとんど問題ないのではない
とも思える。若干遠心力の受けが弱いとは思うが、半年前に前方のRFOカーブは
ある程度直した訳だし、セミスピードのブレードでもそのグリップはだいぶ改善されているのだ。
ここで思い出したのが、RFOループの図形を一度も成功させていないということだった。
よく考えればこれは出来ていない。
既に、LBO、RBOのループは出来ていて、ループ・ジャンプの基礎になっているので
この体の動かし方を前後入れ替えれば習得はそう難しくないのではないかと思った。
結果、2日(2週)で出来る様になった。1日目は、足首の筋力が足りない状態に
陥りこれ以上練習しても無駄だということで切り上げた。
しかし、この1日目の練習でもアクセル・ジャンプは随分と安定する様になった。
1週間経った2日目にLBOの時のコツを洗い出し、RFOループもきちんとしたループ玉を
描ける様になった。
前々から、ジャンプ・タイミングは、スリージャンプよりアクセルの方が遅いのではないか
と思っていたが、実際にアプローチカーブを回し込むということで正しい様だ。
スリー・ジャンプはスリーターンをモチーフにしたものだが、アクセルは実はループをモチーフに
考えなけれはならないのだろう。
最近は、ループジャンプとアクセルジャンプを前方、後方のアウトサイド・エッジ・ジャンプとして
対称的に捉えるようになっていた。
ループ・ジャンプで得たことがかなりアクセルにも適用出来ているからだ。
アクセルもループだと考えると、ターンより深くアプローチカーブを回し込むので当然ジャンプ・
タイミングも遅くなる。
結論としては、ループ図形に乗れないとアクセルジャンプは満足に出来ないということだろう。
ただ、浅いエッジでもアクセルジャンプは出来ない訳ではないので、これはあくまでも
私がイメージするアクセルジャンプだということにしておこう。
RFOループ滑走についての解説は、「滑走技術について」に記した。

振り上げにかかる色々な制動を考えるとこれはなかなか複雑なものがあると思う。
今までは、Y軸方向の回転しか意識していなかったが、X軸方向の回転も当然考慮すべきだと
思う様になった。
重心をスケーティング・レッグに被せることはエッジ・グリップを確実にする効果があるが、
そればかりでなくフリー・レッグの振り上げに際してのX軸回転を打ち消働きもある訳だ。
また、エッジのグリップ理論としてアクセルの時は、重心よりエッジが前にあるのでエッジの傾きを
考えるとアプローチ・カーブと反対に捻るとグリップすると述べたが、スケーティング・レッグを
左に追いやることで重心が右に移動して回転そのものがトレースとほぼ平行になりエッジグリップに
寄与しなくなるものの、エッジグリップを打ち消す様には働かなる。これも重要なポイントだと思う。



では、エッジグリップを何によって得ているかというと、それは助走のカーブによる制動とフリー・
レッグの振り出しの2つの要素だと思う。
また、この2つは互いに関係していてフリーレッグの振り出しの角度と勢いでカーブ制動の大きさが
変化してエッジのグリップ力も大きく変化する。
そうなるとフリー・レッグを振り出す方向が問題となり、トレースと垂直な角度から45度くらいの
範囲の適切な方向に振り出さなければならない。その振り出しを調整するのが腰の角度になってくる。
腰が締って、スケーティング・レッグに対してフリー・レッグがかなり外側を向いた状態に
持って行くことが必要になる。
私は、カート・ブラウニングのアクセルにその捻りの典型的なものを見た。
カート・ブラウニングのアクセルは、回転を始める時期がかなり遅く、回転を始めたらその回転速度は、
恐らく世界一ではないかというくらいのものだ。
適度な重さで比較的緩やかに均等な回転をするヤグディンのフォームと比べるとその美しさでの点は
負けるが、技術的なプロットはより明確に出ていると思う。

以下のムービーは、深い前傾姿勢で重心をスケーティングレッグにかぶせるところまでやった映像だ。


まだ、この時点では、RFOループ図形には乗れていない。
この失敗例では、着氷時に前につんのめってしゃがみこむ様になってしまう。
最初は、どうしてそうなるのか、どうやったら防げるか分らなかったが、色々と分析するうちに、
フリー・レッグの振り上げの反動をエッジで受けていないということが大きな原因だと分かった。
ジャンプ・タイミングは、スリー・ジャンプのタイミングと全く同じだ。重心をスケーティング・
レッグに被せるだけでそのタイミングでもここまで安定した。
しかし、振り上げだけは制動できていない。エッジでの踏ん張りが必要なのだ。
アクセルは、ここから更にスケーティング・レッグを回し込んでやや遅れたタイミングで
ジャンプすることになる。そこまでねばるには、ループ図形のエッジ・ワークが不可欠になってくる。
スリー・ターンを奥までというのとは原理が違う。
このムービーでは、腰も開いていてフリー・レッグはもっとスケーティング・レッグと反対側に
持って行き締めなければならない。正しいのは、ハサミのようになっていること。
ピンセットのように開くことを「開き腰」、英語でいうと open-hips と呼ばれ、多くのスポーツで
望ましくないとされる。
例えば、サッカーでボールを蹴ることを考えてみよう。どちらがよりボールを有効に蹴ることができるか。
この開き腰のせいで、フリーレッグの振り出し方向は、進行方向とほぼ同じになってしまい、
トレースの絞り込みも出来なければエッジグリップも有効には働かないのだ。
腰の向きが悪いため前に振り出すのと同時に腰を開いて大回しにすることで、エッジ・グリップを
得ようとしているのが分るだろう。そして、フリーレッグ側の腰が完全に浮いた感じになっている。
これを引き締めるためには、左右方向の傾き(Z軸)について腰から上を垂直に立てる必要がある。

現在は、まだ両足着氷出来ていないが、振り出しを有効に使って体を空中に放り出す様にジャンプ出来る
様になって来た。
ここまで出来てみると、1.5回転までは、ほとんど回そうという意識なしに楽に回っている。
アプローチ・カーブを適切に絞り込んで、それに正しく乗って回れば、それ自体が相当なモーメントを
持っているので回れるのだ。これに全身の捻りを加えるとどれくらい回れるだろうか。

スリージャンプとアクセルの何が違うか・・・
1. モチーフにするコンパルソリー図形が違う。
2. ジャンプタイミングが違う。
1で2を含んだ全ての要因を説明出来ると思う。
より曲率の強いカーブをより深いエッジで滑り、回転数分だけ余分に
高速にフリーレッグを振り出さなければならないわけで、それを支えるのは
強いエッジ・グリップということになる。

アクセル・ジャンプを通じて、バネを有効利用するだけではなく、遠心力を受ける際にも「くの字」の
姿勢が有効であることが分かった。



素直に傾けるだけでは踏ん張りが利かず、傾け過ぎると立てることが難しい。
また立てる際にそのモーメントを吸収出来ない。
足を斜に腰から上を垂直に構える方法も「く」の字姿勢と似たようなものだが、そのまま体を伸ばすと
倒れてしまい、逆に体を更に折ってもあまり重心位置をトレースに近付けることが出来ないため制御が
必要な時には向かない。
「くの字」で腰を円周の外側に向けていれば、重心位置を適切に保ちながら腰の運動で制御ができる。
これはスピンの体制を作る時にも非常に重要な形だと思う。
アクセルでは、フリー・レッグがスケーティング・レッグを追い越して前に出るくらいまで「くの字」
型の姿勢で腰を後ろに保ったまま踏ん張ることになる。
初心者のうちは、跳ぼうという意識が強いのと、遠心力が弱いために、腰の位置を後ろに残すと尻餅を
つくのではないかというような直感が働き振り込み初期に、踏み切り足の膝を伸ばして腰を前に出して
しまうが、これはジャンプを不安定にする。
踏み切りの際に重心がより円周の内側に入っていた方が、踏み切り時間を長く取れるし、ジャンプする
タイミングも把握し易く、色々な面で許容範囲が大きくなってジャンプそのものが容易になる。



さて、上記ムービーのフォームを直すとどうなるだろう。
理想化し過ぎなのと、調整しきれていないのとで正確ではないが、アプローチ・フォームは、
下図のようになるだろう。フリー・レッグと腰の向きに注目。



その一瞬後。



フォーワード・アウトサイド・ループの図形でアクセル・ジャンプをするというのが、イメージしにくい
人のために以下にムービーを示す。私が、インサイド・アクセルを先にやったのも、このカーブでの
重心の動きや捻りをフリー・レッグの振り上げをする前に習得したかったからだ。
私は、必ずしも競技会の優れた選手のフォームをコピーして自分のジャンプを作ろうとしている訳では
ない。フォームには、動的な意味がある。自分がイメージとして描いているものは、むしろこのムービー
のような単純なものである。このムービーでは、体の前後方向を示すためプラカードのようなものを
動かしているが根本的なイメージは、棒が傾いて回っているというイメージである。
フリー・レッグの振り上げなしでこのカーブを滑るのは難しく、水平滑走方向と右に倒す傾きと後ろに
反るような傾きとの複雑な3軸回転になるので制御しきれるか疑問を感じていた。しかし、フリー・
レッグの振り上げを加えるとむしろその複雑な捻りが踏み切り時に軸の取れた直立姿勢を作り出すのに
都合が良いことが分かった。
問題は、このイメージを具体的にどういうフォームでプレイするか・・・ということだ。
このカーブを実際のジャンプの制動に合わせてクリーンに滑るには、決め打ちでタイミングを取って
フリー・レッグを振り出すのでは駄目なのだ。正しく正確にエッジに乗って滑走すること。
そのために意識するべきことは
 1. ブレードの向き
 2. 制動を受ける方向
 3. エッジの深さ
 4. 重心位置と体の捻り
といった要素になると思う。
ブレードの向きは、常にトレースの接線方向を向いているということ。
制動を受ける方向はブレードに対して垂直ではなく、ブレードの向きと混同しがちだが、これを明確に
分けて考えないと失敗する。その辺りが難しい。
エッジの深さは、クリーンであるためには非常に重要な要素だ。またこのコントロール次第で体を
持ち上げる力が大きく変化する。
重心位置と体の捻りは、1-3の事項から具体的なフォームを作る際に考慮すべきことだ。



この動きをマスターすれば、力強くフリー・レッグを振り上げられ、アプローチ・カーブを
絞り込んで生まれる回転力の恩恵に与れる。
この図形は、出来るだけ低速で力強くエッジにかかる荷重を確保しながら行うべきである。
スピードを上げ過ぎたり、フリーレッグの振り上げが大きすぎるとかえって不安定になる。
焦らないで、確実にカーブを曲がる時のベストな感覚を身につけること。
原理的に正しい技には「これだ!」という感覚があり、それが得られた時の感動は大きい。
3つくらいの要素がピタッと合致しないとうまく行かない。ある特定のスピード、カーブで
それが出来る様になったら、スピードを変えても出来る様にスケーリングして行く。
重心位置や姿勢の把握は大きな手助けになるだろう。
私は、この練習をリンク・サイドで、手摺を使って右腕で体を支えて行っている。
野球やゴルフで素振りをするようにその動作を反復練習して洗練しながら体に覚え込ませる。
ただし、手摺を使った時の支えは、実際にはカーブ滑走による遠心力で得なければならない。
正しい力の流れを体に覚えさせることも必要だが、その状況に持って行くには別の滑走技術が
必要になる。フォーワード・ループを回るのに、重心を円の内側に押さえ込む訳だが、
その時最も有効に感じるのが重心を後ろに傾ける感じだ。
これは丁度アクセルジャンプで足を振り上げる時に腰を後ろに残したままフリーレッグの
振り上げを行うということに近く、尻餅をつくのではないかと思うくらいに尻を後ろに残して、
カーブ制動でブレーキがかかりそれによって尻が持ち上げられてバランスが取れるという
ギリギリのところに持って行くと綺麗なループ玉が描けてしまう。
また、膝の屈伸もこの図形を描くのに大きな効果を持つ。極付近では曲げていた膝を伸ばす
ことで軸が細くなりカーブの巻き込みが容易になる。
難易度が高い動作には遠心力がないと体を支えられない動作が多い。
遠心力をエッジで受けるには、常に制動の方向が滑らかに変化しているので、滑るトレース
カーブを基準にその方向を把握しなければならない。数学的には「微分する」という感じだ。
あくまでもムービーで示した図形は練習用で実際のアクセルでは少し形が違ってくる様に思う。
現在のイメージでは、振り返りアプローチで以下のような図になる。



2002年6月、確かに危険もなく高くジャンプすることは出来る様になって来た。
しかも、エッジは、アプローチカーブをかなり巻き込んでもクリーン。この点は素晴らしい。
恐らく、アプローチから跳び上がるまでのフォームなどについてはある程度幅を持たせた
動作ができるし、こんなものだろう。ただ、今まではモーメントをアプローチ・カーブから得る
ということと、空中でのゆっくりした初歩的な回転軸を得るということが主目的だったため、
恐らくアクセルとして完成させるためには、フリーレッグの振り上げは小さくてもいいから
もっと鋭く振り込まないと駄目なのだろう。
考え過ぎとか、ちょっとした勇気の問題とかそういうレベルだと思う。
しかし、勇気とは言っても空中姿勢の作り方がサッパリ分からないまま無理をしても
それは無謀としか呼べないしどうしたものか。
まず、片足着氷が出来ないのは、着氷時点で重心が安定して着氷足に乗せられる位置に
来ていないと言うことはハッキリしている。
両足着氷している自分の動作をビデオで見ると、ヘソの辺りに回転軸が来ている。
ある日本のフィギュアスケートの技術を掲載したWebページには、アクセルは、
スリー・ジャンプの半回転後にループ・ジャンプの軸に移るようなことが書いてあったのを
思い出した。しかし、現時点での私のループ・ジャンプは、バックワードの大振りの
ダブル・スリー・ジャンプと言えるので、自分はその軸を持っていない。
しかし、よく考えてみると自分にはインサイド・アクセルがあるじゃないか・・・。
そう思いその軸で降りることを画策したところ、何とか持って行けそうだということが分かった。
インサイド・アクセルは、アプローチカーブの読みがかなりシビアだけど、跳べれば
踏み切り足がそのまま着氷足になるので重心移動がなくアクセルより簡単なのだ。
そういう意味では、ループ・ジャンプも同じなので、ループ・ジャンプの軸というのも分かる。
ということで徐々に右足軸の回転に切り替える練習を進めている。
この練習をして驚いたことは、今までロクロ・スピンで回っていたスピンの軸が、
インサイド・アクセルの着氷足の軸で回る様になり、エッジ・ワークまでかなり正しい
スピンに近付いたことだ。
ハイヒールなフィギュア靴で足の裏の筋肉を鍛えてきたというのもあるけれど。
自分の場合、踏み切り足を左に押し込み過ぎのように思う。
肩と腰のヒネリによって押し込む幅は適切に変えなければならない。
ジャンプは、バニー・ホップのように踏み切り足に重心が乗っていないと
足の筋肉のバネがうまく働かないらしいし、余った力は重心を水平方向の
意図しない方向に追いやってしまう様だ。
踏み切り足の真上を重心が追い越さなければならない。
それが安定していると不思議と着氷時に着氷足の上に重心が来る様に思う。
さて、これからの課題については、
1. 重心移動、着氷足軸の回転軸と空中姿勢
2. 振り上げ足の鋭い振り込みと振り込み角などの調整

2002年10月に入って、成功率は低いがぼちぼち片足着氷出来る様になってきた。
そして11月、インサイド・アクセルの完成度も高くなり、無意識にやっていた技の分析が進み、
その応用が出来る様になってきた。そこで、インサイド・アクセルの踏み切り足の位置や
踏ん張り方を、アクセルの踏み切り足にそのまま置き換えるように調整してきた。
足が左右違うので随分隔たりがあるのだが、スケーティング・レッグを左に押し込むような
立て膝にするような感じで構え、スケーティング・レッグと腰の向きも同じ様に合わせてみた。
踏み切り足の上にフリー・レッグを被せる様に振り上げると、着氷のための踏み替えがうまく
行くことが分かり着氷時に重心がきちんと乗る様になった。
この他、ループ・ジャンプの練習から得た、腰を立てるという感じがアクセルでも
良いことが分かり、フォームを修正した。
ジャンプ後フリー・レッグを真後ろに蹴りあげているような感覚とか、スリー・ターンで
肩がターンの極を向いた感じになるのと同じ印象、踏み切り足が取り残されない様に腰重心を残して
やや遅れ気味にフリー・レッグを振り上げたり、地上練習での左前45度への重心移動踏み切りや、
インサイド・アクセルで感じた「イ」の字振り回しフォーム、フリー・レッグ回転追い越し禁止
というような独自に養った感覚を駆使して調整してきた。
何より重要なのは、感覚主義なので、エッジが適切な荷重を受けているかということだ。
そして、アプローチカーブのトレスを重心が乗り越える時に、重心が踏み切り足の真上を
通過しているかが非常に重要だと認識出来る様になった。
一応は、出来たが、まだまだ完成とは呼べない。
出来る限り遅い回転で、回そうとしないで跳ぶという意識を持っていたことや、エッジの深さや
フォームが、オーバー・アクションぎみなのは分かりつつも、これで跳べるはずだと思って
やっていたものが、アクセルに関してはやや通用しない部分があったようだ。
やや瞬発力を上げているが、他の要素でフォロー出来るならもっと緩やかな形に戻したい。
まだ、渾沌としているので意識的に技術的な整理がつくにはもう少し時間がかかる。



2002年12月28日
今年の滑り納め、跳び納め・・・
また少し良くなったと思う。
前回のものと比較すると何か分かるかもしれない。
フォームが深いカート・ブラウニング氏の映像を手本にフォームを調整しながら
捻りとその役割について考察する一方、タイミングの感覚と瞬発力を養うため、
最高速でスリー・ジャンプを跳ぶ練習をした。
その結果、フリーレッグの振り込みでフリーレッグだけではなく、腰と肩を同時に鋭く
振り込む様になり、これとともに左側への押えの不足感が解消された。
腰そのものを振り込む踏ん張りはかなり重く、右腿の外側の筋肉を酷使している。
まだまだ完成度は低いが、高速でもスピードに関係なく同じ感覚で跳べ、しかも怖くない。



2003年1月18日
右腿の筋肉を酷使していたのは、フォームに無理があったのが原因みたいだ。
スケーティング・レッグをかなり前で踏ん張る様にして、フリー・レッグと腕を
前に真直ぐ伸ばす感じで振り出して回ると楽に跳べるようだ。
ただし、腕の振り出しのタイミングと強さは、フリーレッグの振り出しと完全に
合わせなければならない。
このフォームは、伊藤みどりさんが子供の頃シングル・アクセルを跳んでいた
時のフォームに似ている。これをうまく折り畳むとヤグディン選手の
トリプル・アクセルのフォームに発展するような気がする。
コツが掴めたので、4種類くらいの違った跳び方が出来そうだ。
今までの練習は、その日の気分によって重視することを変えて、少しずつ
難易度が低いところから詰めてきた。
最も爽快なのが、自分をポーンと放り投げるようにして距離を稼いで
途中から高速回転に移るディレイド・アクセルだ。
やはり、これはスピンの軸を正しく作らないと駄目だ。
丁度、大の字に大きく跳んだスリー・ジャンプの頂点辺りで、振り上げ足の
ラインに軸を合わせる感じで重心を移して軸を絞る感じ。
着氷が不完全ながら、一応ディレイドになっているかなあ、という程度には仕上げた。
ディレイド・アクセルは、映像で初めて見たのだが、カート・ブラウニング氏の
ダブル・アクセルで、妙に途中から回るなあと思っていた。流石に世界初の
4回転ジャンパーだ、素晴らしい回転をする。
以下のサイトで、極端なシングル・ディレイド・アクセルを見ることが出来る。
 http://www.iceskate.net/avi.html
 この他、クラッシックなスタイルで4回転トウ・ループを回ったり、
 連続でバタフライをしているような映像もある。
アクセルで怖いのは、踏み切り足が取り残されることで不安定になること。
それからジャンプが低くて回転が足りない場合。
曲率の浅い直線的なアプローチの場合は、回るのに案外スピードが要る割に
高さが稼げないので、回転が足りなくなりがちでスピードも出ているので怖い。
捻挫するのも嫌なので、高さをまず得たいと思った。
深い曲率のジャンプは、方向やタイミングを掴むのが難しいが、比較的低速でも
高さを稼げるので、ゆっくり回転出来る。だから、自分の様にスピンの練習を
あまりしていない者でも何とか回れる。
とにかく、回転ジャンプは空中姿勢を作るのが難しいわけで、速い回転程それが
崩れ易く、崩れた場合の危険も大きい。
最初から最適に回れる細い軸を目指して練習すると思わぬ高速回転して慌てる危険もある。
(恐らく正しい練習は、きちんとスピンを練習して最初からそれを目指すことだ)
ジャンプする際に、振り込みの方向を少し外してやや大回りすれば、回転を絞れなく出来る。
これにより、不意な高速回転や軸が背中側に回って制御不能になることを防げる。
着氷は、ジャンプ後に着氷足を伸ばして重心の真下に足を置く様に心がければ
回転が足りなくても、安全な転び方や両足もしくは反対側の足で着氷出来る。
ともかく、完成度を上げるには、もう少し研究が必要だ。

大きくフリーレッグと腕を振り出す動作を床上で行うと、下のような動作になる。



実際には、体が上に放り上げられているし足を振り上げた方向に進むので
氷の上の動作と床上では違う。
氷の上で同じ感じでやると以下の様になる。



振り出し時点でもっとフリー・レッグを伸ばすべきだとか、空中姿勢が前傾過ぎるとか
良くない点も多いので悪しからず。
ジャンプを行うのに、踏み切り前から回すことはいけないとよく言われるが、
恐らくそれは腕と肩で回転させる点についての指摘だろう。
腰の振り込みも回しているといえばそうなのだが、これは絶対に必要な要素だ。
どのジャンプでも、チェックは重要な要素だが、アクセルもまたフリーレッグの
振り上げがほぼ完了するまで、踏み切り足側の肩はチェックしている。

2003年2月22日
デタラメでもいいから、色々なタイプのアクセル・ジャンプに応用できそうな動作を
練習しながら、それを部品として体に覚えさせ、イメージした動作を最適に行うべく
覚えさせた動作を自然に選択する様に探りを入れて行ったら、いい感じに落ち着いてきた。
先日、「日本のスケート発達史」という本をみつけて見ていたら、国民体育大会
第22回大会(日光)の小塚嗣彦選手のアクセル・ジャンプのアプローチだと思われる
写真に目が止まった。美しいフォームなのだ。
私は、フォームを整えようとはしていないが、空振りしない力強い大きな動作をしたいとは
思っている。それでも合理的な動きを追求すれば美しく整って来るものだ。
下のムービーは、当初目指していたくらいにフリー・レッグを強く振り込めている。


この角度から見ると、鋭く理想的なスリー・ターンのエッジ・ワークでシャンプしている
のが分かる。ただし、タイミングは少し外しているし、巻き込むのが早すぎると思う。
ビデオで見て、高速スリー・ジャンプをやって、これだと思ったのと同じイメージの
形になっていたのが印象に残っている。
私は、ほとんどスピンの練習をせず、トラベリングをあまり真剣に直そうとしていなかった。
とにかく力強く振り込めなければつまらない。最近、ルシンダ・ルーさんの力強いスピンの
アプローチが参考にならないかと見ていたが、案外このアクセルのターン要素は、スピンの
それと同じだと思う様になった。スピンの入り方は、軸足を立てるという風にしか見えない
のだけど直進成分をエッジでどのように受けるかは、スリー・ターンの極に重心を押し付ける
様にという感じに思える。スピンの巻き込みのトレスは良いけれど、ターン後の引きが大きく
なっているのが自分のスピンの入り方の悪いところのようだ。それを直してやってみると
だいぶ良くなったと思う。そうやってみると今度は、スピンがアクセルのヒントをくれた。
スタンド・スピンのアプローチの際にフリー・レッグが体の真横より前に来るのはあまり良く
ないと思う様になった。これは、アプローチ時点でのターンと密接な関係がある。シット・
スピンは最初から前に出しているようなものなのでこの限りではない。アプローチ時点で
フリーレッグの強い振り込みからモーメントを得ようとする時にそうなのだ。
このことはアクセルでも言えて、空中で軸を絞ろうとする際に足が前に出ていては困るわけで、
ジャンプの際にフリーレッグが先行して、他が追い付くならまだしも、そんなに追いつけない
ことも分かってきた。以前、元インストラクターの人に教えてもらった時は、斜前上方45度と
言っていたが、これはある意味正しくないかも。腰相対で前に出なければ膝を折ることで
軸は取れるので、腰ごと振り込めばフリーレッグが先行することはなくなるわけだ。
自分のアクセルでは、空中でランディング姿勢に移る辺りが気に入っているが、これは
肩先行のターンが基礎になっている。教本には、ターンの回転のチェックは、肩を振り戻す
みたいな書き方をしているが、それは腰を基準に考えているからで、実際の感覚では
肩を先行させておいて、その角度を空中で一定に保ち他が追い付くのを待つ感じになる。
ジャンプのチェックが明確な長野オリンピックでのイリア・クーリック選手は、かなり
肩を先行させて回転していた。肩の方向が空中で固定されると着氷地点を目で確認出来る
くらいの余裕が出て来るのだ。こういう猫のようなしなやかなランディング体勢への
適応は、カート・ブラウニング氏がみごとだが、私もだいぶ身についてきたと思う。
それにしてもタイミングもつかめるとかなり楽に跳べるものだ。
ということで、とりあえずアクセルへの道は、これにて「完」
もしかしたら、ダブル・アクセルに続くかも・・・

(C)2002,2003 ICE_NINJA ALL RIGHTS RESERVED.

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