ジャンプについて


3つの基本原理

ジャンプに関しては、スケートでも走り高跳びなどでも基本的に原理は変わらない。
スケートの場合は、踏切りに関して大きな制約があるのみだ。
回転ジャンプの場合、踏切り時に足首が回転を生み出す重要な支えになっている。
さて、ここで論じるのは、高く上がるための原理である。
私が考える基本原理は、次の3つである。

1. 足のバネ
2. 助走の運動を上向きに変換
3. 振り上げ動作など

 足のバネについては、言うまでもなく、足で地面を蹴るときの力である。
蹴ると言うよりは、押すと言った方がいい。
ほぼ一瞬のことではあるが、筋肉が体を持ち上げるのは、衝突の様な瞬間的な
動作ではなく、持続的に一定時間力を与え続ける形になる。
よってその動作は踏切り以前に既に始まっていなければならない。
誰しも、ジャンプとは、この踏切りの力に頼ろうとするが、実際にはこの力だけでは
十分に体を持ち上げることは出来ない。

 スケートで特に有効なのが、助走を上向きの力に変換する原理である。
下図の様に、体を後方に倒した状態で助走で得た運動にブレードでブレーキをかけると、
傾けた体を立てるような動作になる。



このとき進行方向にはブレーキがかかるが、体はブレードを支点とした円運動で
持ち上げられることになる。

 この2つの原理で、主に上向きの力を得る訳だが、もう一つ補助的なものを忘れてはないない。
ネコは、自分の身長の3倍くらいのところに飛びつくことができるくらいの跳躍力を持つが、
それを可能にしているのが第3の原理である。
この原理を知らないと、足に余分な負担をかけてしまうことになる。
下図のネコの肩の位置の動きに注目。



足で蹴る以前に、肩にある重心を全身の筋肉を伸ばすことで持ち上げている。
踏切った後ろ足は、それを後押しするような感じになる。
スケートのジャンプでも、伸びをするように肩を持ち上げることは重要。
大きな質量を持つ腿を振り上げることもジャンプの大きな助けとなる。

スリー・ジャンプ

このジャンプは、前進踏み切りの半回転ジャンプである。別名ワルツ・ジャンプ。
私は、スケートを始めた当初、1回転以上の回転技はやるつもりはなかった。
だから、最初はこのジャンプだけを思ったように跳べるようになりたいと思っていた。
それゆえ、思い入れも深く、こだわりもある。
競技会ではほとんど見かけないこのジャンプだが、もしもこのジャンプだけで競う競技会があったら
果たしてこのジャンプのどういう要素が問われるのだろうか・・・。
私は、スケートを習った訳ではないので勝手な解釈をしているが、名前の通りスリー・ターンが
勢い余ってジャンプ技に発展した様なものだと思う。
ただし、スリー・ターンにも色々ある。
ターンは、本来の機能としては、大振りにならずスマートに半回転するのが望ましい。
そうすると、直進滑走からフラット・エッジに近いターンをするのが理想ということになる。
この考えでスリー・ターンをやった場合、エッジ・ワークが浅くなる。
私が理想とするスリー・ターンは、機能的には無駄な側面を持つが、大袈裟に3を描く深い
スリー・ターンである。エッジの使い分けが明確で、遠心力を強く受け、エッジで強くしっかりと
体を支えることになる。フラット・エッジには力がないし、体を傾けないので棒立ちになる。
フィギュア・スケートの大根役者が居るとしたら、深いエッジを使えない人だろう。
力強く、安定して、抑揚のある滑走やジャンプをするためには、エッジの使い分けを明確にし
滑らかで適度な曲率の曲線を体を傾けて滑る必要がある。
下図が、スリー・ターンの浅い場合と深い場合のトレースである。



スリー・ジャンプに発展するのは、当然深い方である。
スリー・ターンを正しく行うと、頂点のところでエッジが停止しグリップする。
このグリップを踏み切りに使うのがスリー・ジャンプの基本だ。
スリー・ジャンプと同様に前進踏み切り1回転半するアクセル・ジャンプは、スピード・スケートの
選手が最初に行ったということだ。だとすれば、これもトウ・ピックなど使う訳もない。
この踏み切りの時のエッジによる力強いグリップをどうやって生み出すかがジャンプの決め手。
クリーンにコジることなく、しかも力強く安定して踏み切る必要がある。非常に微妙である。
スリー・ジャンプに於いては、回転がほとんどないので、恐らく評価対象は、
1. エッジのクリーンさ
2. 動作の安定性
3. ジャンプの高さ
4. 姿勢と動き全体の滑らかさ
5. 動作の大きさ
といったことになるだろう。
当初私は、スリー・ジャンプとアクセル・ジャンプのアプローチには差があるのだろうか
という疑問をずっと抱いていたが、基本的な要素としては、ほとんど差はないようである。
アクセル・ジャンプの場合は、1回転以上するので前傾姿勢では跳べない。
しかも、回転を生み出すために踏み切り足により強力なグリップが要求される。
というのが現在の見解である。
以下にお見せするムービーは、私が跳んだスリー・ジャンプである。
オリンピック選手のアクセル・ジャンプのフォームを見てそれに近付けようとしているもの。
そして、更により高く跳ぼうとしたものである。
小学校時代に走り高跳びをやっていたので、スケートでも高く跳ぶことには思い入れがあるのだ。
この2つのムービーは、私の選んだ回転方向が一般の人と逆なので普通の人に合わせて
左右反転してある。



氷忍者流・スリー・ジャンプの手ほどき

トウ・ループの謎

トウ・ループのトウの役割は、誰にでも分かるが、スケーティング・レッグは、果たして
踏切りにどれだけ関与するものなのであろうか。
私は、ジャンプは曲線アプローチから入り、直前のターンによるモーメントを
そのまま生かして回るものだと思っているが、最近の傾向として、アプローチ・カーブの
モーメントに頼らず自力で高速回転を生み出す様な練習方法を取っている人を見かける。
この場合、アプローチは直線に近く、両足を縦に構えるためにトウにかかる比重が大きい様に見える。
その方が有利なのか?いや、もしかしたらコンパルソリーなどの基礎を学ばず、いきなり
ジャンプやスピンを学ぶ傾向からそうしているのかもしれない・・などと思うのである。
英語では、トウ・ループをトウ・アシスティッド・ループ (toe-assisted loop) と呼ぶ。
エッジ・ジャンプは、不安定なためトウで軽く支えてスケーティング・レッグでの踏み切りを助ける、
という意味であろう。
トウ・ループのスケーティング・レッグは右足で、アウト・サイド・エッジでの踏切りだが、
直線アプローチでは、フラット・エッジに近く、果たしてエッジを使用しているのだろうか。
最近、私は2つの発見をした。
 一つは、トウを突かないトウ・ループが出来ないものかと試したのだが、エッジ・ワークが
全くループ・ジャンプそのものだということに気付いた。
フリップ・ジャンプをトウ・サルコウと呼ぶのも納得だし、トウ・ループのループは、
ループ・ジャンプのループなのかと今更の様に納得した。
通常のループ・ジャンプでは、フリー・レッグは、前に構える。そして腰掛ける様にして
スケーティング・レッグを回し込み踏切る。
これに対して、トウを使わないトウ・ループは、フリー・レッグを後ろに構えてジャンプする。
しかし、スケーティング・レッグのエッジの使い方は、全く同じなのだ。
 もう一つの発見は、NHKの番組「課外授業 ようこそ先輩」で伊藤みどりさんが子供達に見せた
トウ・ループで気付いたことだ。
トウ・ジャンプは、両足踏切りだと言われるが、その比重とタイミングが分からない。
それに対する答えをこの番組が教えてくれた。
答えは、完全に両足踏切りで同じタイミング。
スケーティング・レッグのエッジもきちんと使っている。
ただし、ここまで基礎に忠実なジャンプは、4回転時代の今では古くなってしまったのか?
という感じもする。オリンピックなどの競技会では、あまり見ない。
 いや、ヤグディン選手のフォームはこれに近いか・・・
ただ、この方法でジャンプを行ってみると、トウ・ループとフリップのジャンプが
全く等価に扱えるという発見をした。
トウ・ジャンプでトウを突く足をスケーティング・レッグの後ろに縦に構えると、
当然左右に偏りが出来て、この2つのジャンプは全く別の技になってしまう。
回転の軸を得るための肩のまわし込み方などが大きく異なるのだ。
ところが、両足ジャンプだとその差がとても小さくなり同じに扱える。

トウ・ループのジャブ

初心者にありがちな大間違い。
下の図のような、トウ・ループのトウを使ったジャンプだけの練習がある。



トウを突いた衝撃で体が後方に持ち上げられると思ってはいけない。
トウ・ループの場合のジャンプ力は、前述の原理2と3によるものがほとんどだ。
トウを突く際、足だけの動作では、単に氷を砕くたけに力が使われる。



また、大まかな力学計算をすると、トウにしっかり体重を乗せたとしても、
トウを突く左足の質量が全体重の1/5くらいだと仮定すると、
反作用で後ろ向きに持ち上げられるスピードは、トウを振り下した左足のスピードの
1/5にしか加速しない。
トウを氷に突き刺すのは、以下のような抗力を得ることが目的なのだ。



2004年2月の比較的効率良く浮き上がった実例


さて、ここで私の下手なトウ・ループを見てもらおう。
本来は、お見せ出来ない程直すところが多い失敗演技なのだが、初歩的なトウ・ループの
要素はムービーからすべて読み取れると思う。
失敗した演技からも学ぶものは多いであろうし、それらを技術要素に分解してみた時、
学ぶべきものと、避けるべきものを区別する判断力は当然持っておくべきである。
このジャンプではほとんど余分な力は使っていない、私が提唱する深いスリーターンから入る
曲線アプローチのトウ・ループである。トウで氷を粉砕することもない。
スリーターンの入り口では、いい感じで体重をスケーティング・レッグに完全に乗せている。
これが中途半端だとスリー・ターンも本物にならない。
スリーターンのターン直後からモーメントが弛んでやや不安定になっている。
このムービーでは、両足同時踏み切りではなく、初心者的にほぼトウだけで踏み切っている。
このために重心が片寄って不安定になっているとも言えるが、このまま整える方法もある。
私の理想は両足踏み切りだが、両足踏み切りするには、コースをもっと外側に取らないとだめだろう。
良いトウ・ループは、トウを突いた足の足元にスケーティング・レッグが吸い込まれるように
近付いてほぼ追い付いた時にジャンプする感じになる。
回転軸については、絞られすぎて回転が余りチェック仕切れず乱れて着氷をインサイドぎみに受けている。
現在(2001.7)は、靴が変わってこのムービーのようすら出来なくなっているが、
まあ、骨子は出来ていると思うから、反復練習すれば復活し、更に良くなってくるだろう。
最初にこのアプローチをしようと思った時は、「スリー・ターンから入る」というヒントしかなく
ターン後どれくらいのタイミングか・・・などは試行錯誤していた。
大まかな流れ、抑揚、タイミングの問題や、アプローチ・カーブから回転力を得る方法など
読み取れる人には読み取れるであろう。
フォームを整えて美しくというよりは、もっと動作を大きく、伸び伸びとやってみたいものである。
以下の映像は、例によって私が時計回りスケーターであるために左右反転してある。


更に、2002年6月時点でのムービー


アクセルの練習で、だいぶ軸が通る様になり、1回転しようとしても回転が余る様になってきた。
最近では、1.5回転を少し超える様になったのでそろそろ2回転というところ。
トウ・ジャンプはあまり興味がないのでほとんど練習していないのだが。
まだ、軸が背骨に近く、もっと軸足に持って行かねばならない。
アプローチでは、もっと膝を曲げてバネをつけなければならないが、アプローチの動作、
タイミングは適切でトウの突き方には無駄がないと思う。
両足踏み切りしているが、感覚的にはバレエのプリエみたいな両足屈伸を思わせる。
反時計回りの人なら、右足の踵に左足のつま先をつけてT字ストップみたいに90度に
構えて、そのまま屈伸するような感じだ。
vantage のようなトウピックがバカでかいブレードがあるところを見ると、最近の流行りは
やはりトウピックに体重のかなりの部分を乗せるのだろうと思う。
直線アプローチからのトウ・ループの方法は、ルッツのように斜にスケーティング・レッグを
直線的に開いて、重心はトウを突く位置へ向けての直線上に保持するのだと思う。
ただ、このフォームを初心者が学ぶ時のハマりどころとしては、トウ・ピックへ重心を
スムーズに持って行くことが出来ず、踏み替えになってしまうことだと思う。
重心はブレるわタイミングは外すわもう大変。
ジャンプ直前まで体重はスケーティング・レッグで支えていないと駄目でしょう。
トウ・ループの良くない例として、トウに乗り過ぎるということがある。
しかし、ジャンプするには十分に体重を乗せなければならないのである意味乗らないと
まずいとも言える。厳密に言うと
1. スケーティングレッグから体重移動してトウに踏み換えしてはいけない。
2. トウに乗ったまま回転してはいけない。
一般のジャンプは、跳び上がる直前まで肩を捻ってチェックにより保持し、ジャンプ直前に
一気にそれをふりほどいてその勢いで回転するのであって、チェックした捻りのふりほどきの
回転加速を氷が足についている間に行っている。
足が離れてからはモーメントは一定なので、軸を絞って回転数を上げる。
恐らくトウに乗って回っているのであれば、捻りによる回転加速など使っていない。

トウに乗って回る人は、大抵背骨を軸にして回らず、常にお腹を下にしていたいから
トウに乗ったまま回転(横振り)するのだ。
多分に恐怖心が影響しているので無意識に癖になり易い。
この悪い例を実演してみた。


恐らく、こうならないためには、スケーティング・レッグのアウトサイド・エッジで捻リを
きちんと受け止めている必要があると思う。
空中に飛び上がった時には、空中で真後ろを向いているイメージにすると大体1回転している。
一度そうやって安心してしまえばできる様になるのだが。
また、なぜかスケート教室では、直進アプローチでトウ・ループを教えている。
曲線アプローチは、方向を把握しにくい欠点はあるが、軸を前後方向でなく横方向に
倒した回転も可能であり、この場合、背中をトウで支えるようなイメージがあって
やや安心して振り向いて回転できる。
直進アプローチの最大の欠点は、ジャンプ着氷時に美しい適切なカーブに乗らないで、
そのまま真直ぐに抜けてしまうことだ。
これは、コンビネーション・ジャンプを行う際にも大きく影響することだと思うが。

フリップ・ジャンプ

ふと、フリップ・ジャンプを練習していて、スケーティング・レッグが反対側に振れて
引き戻そうとしたら、何だ、これはルッツじゃないか・・・ということになった。
案外、フリップ・ジャンプの練習中に、ルッツ・ジャンプが生まれたのかも。
そういう意味では、
フリップ・ジャンプ=インサイド・ルッツ
ルッツ・ジャンプ=アウトサイド・フリップ
と言えないか。
確かにそう言うのは無理がある。
しかし、肩をスケーティング・レッグに被せる量とかは、ルッツとよく似ているなあ。
重心の外し方を考えると、丁度エッジ・ワークに関して対象になるのだ。

サルコウ・ジャンプ

下の図は、何を言わんとするものか・・



多くの場合、フリー・レッグを大の字に広げてスケーティング・レッグを引っ張り過ぎて
大回りするので小さく巻き込む様に事前に1回転余分に回るアプローチがある。
サルコウの完成度を上げるには、トウを突かないインサイド・ルッツのつもりで
跳ぶと案外いいかもしれないと思った。
スケーティング・レッグの膝を立て、フリー・レッグを後ろに引いたイの字姿勢から
インサイドに素直に体を傾け、重心を内側に追いやりつつ、イの字の傾斜した背を
垂直に立てながらフリー・レッグをスケーティング・レッグのつま先方向に内蹴り
するようにして腿を蹴り上げる感じにしてジャンプ。
高く跳ぶには、スケーティング・レッグを後方にも引かなければならない。
3次元的に各動きを丁度良くブレンドしないと・・・

人に教えていて、幾つか気付いたことがある。
ジャンプの見分け方としても、アプローチでハの字に開く特徴があるということだが、
開き腰系のピンセット状の足の開きがジャンプなどに有利かというとそうではないように思える。
どちらかというと、ハサミのように前後に足を開く方が鋭い制御が可能だ。
また、ジャンプのアプローチでも、捻りを溜めるためにターン後に回転をチェックするのだけど
サルコウの場合は、どの部分をどうチェックするのが有効なのかと考えてみた。
・・・考えたことなかったなあ・・・
で、考え直すと肩よりもフリー・レッグをチェックする方が大きいと感じた。
そこで考えたのは、スリー・ターンからサルコウを跳ぶ場合、ターン後にスパイラル姿勢で
LBIに乗って、左右ではなく上下に足を開き、やや腰をアプローチ・カーブの内側に押し込む様に
イの字フォームを振り回す様にして前傾の体を立てながら挟み動作でフリー・レッグを振り込んで、
途中からフリー・レッグの踵をスケーティング・レッグのつま先方向に向けて
捻りによって前傾だった姿勢を右(元々の滑って来た方向)に傾ける感じでフリー・レッグの
腿を振り上げて、またぐ様にジャンプしてやると良い気がした。
以下に実演したムービーを示す。


当然、これは正しいサルコウではないが、原理的には8割くらいの要素は満たしていると思う。
この方法の利点は、床上でそのまま練習出来るところにある。
余談だが、サルコウは、モホークターンの失敗から生まれ、ルッツ・ジャンプは、サルコウの失敗
から生まれた様な気がする。あくまでも推測だが・・・
焦る人は、ターン後チェックすることも考えないで、トウに乗り、凄い振り込みスピードでフリー・レッグを
巻き込もうとするが、不思議とターン後にちゃんとエッジに乗って滑走しチェックによって緩やかになった
重い回転でエッジに踏ん張りがかかると軽く跳べる。
スケートの技は、気持ちを抑制することで簡単に出来ることも少なくない。

実際のフリーのプログラムで使われるサルコウのアプローチの仕方をトレス図にしてみた。
一つは、図解コーチのよく分からない曖昧で不完全な図を自分なりにアレンジしてというか復元したもの。
もう一つは、競技会の選手がやっていたものを自分で真似てみて図に起こしたもの。
その方向などを出切る限り自分の感覚に近くなる様に正確に描いてみた。しかしながら、あくまでも
イメージであり、バラつきや演技の幅もあるので必ずしもこの通りになるとは限らない。
洋書でもあまりジャンプのアプローチが正確に図示されたものは少ないが、これだけでも図が正しければ
良いイメージ・トレーニングになると思う。ステップ・シーケンスの右足と左足が分からなくなる人向き。
図は、分かり切ったインサイド、アウトサイドを省略して、日本人向きに漢字で示した。

サルコウのトレス図

スプリット

スプリット系は、チアリーディングでよく見る動きだ。
エンターテイメント系の技なのか、競技会では見ないなあ・・・
ある意味邪道かとも思ったが、やってみると案外難しい。
 <やはり格好わるいので映像削除>
フリップ・ジャンプを半回転にして前進着氷するような感じで、大股で大きく
ジャンプしながら、瞬間的に足を大きく開いて上げる。
参考にしたのは、ロシアン・スプリットだが前後に開く一般のスプリットとの
中間くらいになっている。アプローチさえ分かれば、後は何とかなるもの。
高く跳ばなければならない上、瞬発的な動きで足を上に上げるので筋力も
柔軟性も必要だろう。十分に足を上げるには至らず、これだけ開くのがやっとだ。
ビデオで確認する前は、ジャンプ後に抜ける方向がポイントだと感じていたが、
ビデオで確認すると単に回り過ぎていた。ポーンと飛び上がるには、有効なトウによる
踏み切りと流れる様なスケーティング・レッグの抜きがまず必要で、駆け抜けるように
重心を移しながら滞空時間を稼いで瞬時に足を開いてつま先を上げる。タイミングも重要。
このとき回り過ぎないようするには、肩の強力なチェックが必要だ。
氷を粉砕してしまうような人が、トウを正しく使う練習としていいかもしれない。
氷を粉砕するような無駄なトウの突き方では、無理だろうと思う。
バックのまま飛び上がる練習より、半回転する分フリップに近いわけだし、
体を捻った体勢でトウを正しく使えるようになることも大切だと思う。
半回転技だがフリップが出来ないとこの技も出来ないかも。
なお、私が参考にしたのは、名称は洋書から、参考演技は、
http://www.iceskate.net/avi.html
の "gb_rsplit.avi" です。

ルッツ・ジャンプとは

スケーティング・レッグとトウを突く足は、フリップ・ジャンプと同じである。
違いは、スケーティング・レッグのイン・サイドを使うか、アウト・サイドを使うか
ということなのだが、このルッツのエッジ・ワークは素直ではない。
観客の立場から見ると、ジャンプの見分け方で比較的区別しやすいのがこのルッツだ。
多くの場合、直立したまま長い後方滑走をするのですぐに分かる。
このジャンプのスケーティング・レッグのエッジ・ワークは、コンパルソリーのカウンタ図形
と同じだと言われている。
素直でないと言ったこのエッジ・ワークだが、これをまともにやるとかなり足首に負担がかかる。
長野オリンピックの男子フリーの金メダリストのイリア・クーリック選手の演技を見ると
足首が折れるのではないかというくらいにグニャッと曲がっている。
ルッツのカウンター動作は、アウトサイド・カウンターで、スリー・ターンと違って、
ターンによってエッジはチェンジしない。この場合アウト・サイド・エッジのみでターンを行う。
多分、下図くらい明確なエッジ・ワークを行わないと、スケーティング・レッグでの踏切りを
行うことは出来ないだろうと思う。また、1回転くらいなら、トウを使わずに片足でジャンプ
出来るのではなかろうか。
それくらいでなければ正しいルッツとは呼べない気がする。

   

カウンター動作は、S字カーブ上の技であり、カーブ途中に反対側のカーブに移行する
比較的高度なものだ。
忘れてはならないのは、エッジ・ワークを支えるのは、腕、腰、肩などによる舵取りだということ。

片足ルッツが出来た!

実際にやってみると、このアプローチ・シーケンスの味わい深いこと。
初めてクロスオーバーでアウト・サイド・エッジに乗り切ることが出来たような感動。
私は、時計回りスケーターだが、一般の人に合わせて説明すると・・・
トレス図は、目測だが以下のような形になる。



長い直線から徐々に逆カーブに入って行くのだが、肩でカウンターを当てながらLBOをグッと
右に押し込む感じ。図のAカーブがそれで、このカーブに乗った時の感覚は、他のどの技とも違って
独特に感じられる。
次いで、LBOのアウト・サイドを維持しながら、逆回転方向に溜めた腕と肩を今度は順方向に
強く振り込んで、そのままBカーブに持ってくる。
このカーブを更に巻き込んだタイミングで踏み切り、ジャンプ。
見た目よりも足首にかかる力は素直で、1回転であれば片足でも十分に踏み切れる。
この感動的なまでの深い味わい。ジャンプで多回転回ることしか頭にない人や、直線アプローチで
ルッツだかフリップだか分らないようなジャンプをしている人には分かるまい。
下図は、Aカーブに乗った時の私の片足ルッツのフォームのイメージ。



以下のムービーは、実際の練習風景。
Aカーブを膨らませ過ぎて転倒したシーン。まずはAカーブだけの練習をして
このカーブに乗れる様になったら、アウトサイド・エッジを維持しながらBカーブに
持ってくる様にする。タイミングというかリズムというのがシビアで、上体をスケーティング
レッグに被せる加減とかもなかなか難しいものがある。
とにかく、こんなヘボ練習でもかなり深いエッジに乗っていることが分るだろう。
トレス図に合わせるため、このムービーも左右反転してある。



ループ・ジャンプ

このジャンプのモチーフは、コンパルソリーのループ図形に由来することは分るが、
トレス図を見て、ループ玉とループ・ジャンプとがどう結びつくか分らなかった。
今ではほぼ確信している。恐らく下図の赤い部分をアプローチ・カーブとして使うのだ。



フィギュア・スケートの解説書でジャンプのトレス図を見ると、みんな概念図で描いている。
確かにそういうイメージだし、アプローチ時のスピードによって図形は変化するので厳密に
図に書いても意味がないのかもしれない。
目測ではあるが、自分が跳んだ時のトレスを以下に示す。



自分のシングル・ループ・ジャンプもフォームはまだ完成していないが、トレスは大体
似たようなものになるだろう。
ビデオで実際の演技を見ると、助走して滑って来た方向と直角にブレードを当ててジャンプして
いるように見える。しかし、ジャンプする方向はどの向きか分らない。
実際に自分がやる時には、自分が向いている方向を基準に考えてしまう。
この辺りをきちんと整理しないと、正しいアプローチ・カーブを設定出来ないのだ。

インサイド・アクセル

オリンピックなどの競技会の演技直前のウォーミング・アップでプルシェンコ選手は、
よく見慣れないジャンプをする。
フリー・レッグを後ろに伸ばした状態でのループ・ジャンプ。これはトウ・ループでトウを
突かないのと同等。
そして、正式な競技では、まず出て来ない、インサイド・アクセル。
インサイド・アクセルは、回れても1回転半が精々だといわれる。
なぜ直前にこのようなジャンプを跳ぶのか?
もしかしたら、彼の非常に安定したジャンプの秘訣がその辺りにあるのでは?
などと思ってしまうのは私だけだろうか。
ウォーミング・アップでは、無理な運動を避けて体を暖めるのが主な目的になる。
そして、勘が狂わないように体のコンディション、タイミングや感覚的な要素を確認するという
ことになると思う。そこで出てくるのだから微妙な要素を含んでいるに違いない。
フリー・レッグを後ろに伸ばした状態でのループ・ジャンプは、トウ・ループに関して、
ともすれば重心がトウに偏って、スケーティング・レッグでのエッジ・ワークが
いいかげんになるのを矯正出来る。
インサイド・アクセルは、軸を収束させるためのアプローチ・カーブのスポットが
非常にシビアだと思う。
だいぶ安定したのでムービーを差しかえた。


色々とやってみた結果、踏み出しは、モホークの入り方に近いと思う。
ただし、スケーティング・レッグの腿を下腹に引き付けるような感じで締めて
やや内股ぎみくらいにして肩重心をかぶせると安定する。
ジャンプ動作に入ったとき、背筋が曲がっていると肩がバタフライみたいな大振りをして
失敗する傾向があることに気づき、腰を立てるという感じで背筋を伸ばすと
悪いパターンにハマることがなくなった。
フリー・レッグは、サルコウのようにハの字に開いてから膝を曲げて後ろに
振り込むのだが、その動作を最後までやると軸が前に傾いてバランスを崩してしまう。
そこで、振り上げを途中で止めてみると良くなった上に、大振りだった回転軸を
絞り込んだような効果が得られた。空中で重心移動が起きたのだ。

2003.1.26
私がやっているインサイドアクセルのイメージを、図形モデルでアニメーションに
してみた。まず、下図を見て欲しい。



左側は、アプローチカーブに乗った図。黄色いところは、重心をこの範囲に
入れなければならないと感じる範囲で、クサビ形のイメージと呼んでいる。
右側にプレイヤーモデルを拡大しているが、右腿と腰の成す角は、踏み切り時には
しっかりと締めておかなければならない。ここが開くと致命的だ。
ここは最初から締めておくよりは、やや開いておいて左足を含めて蛇腹を畳む様に
閉じる感じにするのが良い。左足は、外側に振り込もうとしてはいけない。
スケーティン・グレッグに向かって引き付ける感じが正しい。
インサイド・アクセルを筋力をほぼ使い果たした帰り際にやると、同じ感覚でやっても
出来なくなってしまうことに悩まされ、原因がなかなか掴めなかった。
最近その原因がやっと分かってきた。
うまく行っている時は無意識に腿と腰を素早く締めていたのが、疲れてくると同じ様な
感覚でやっても開いてしまうようだ。同様に全く鍛えていない人にも難しいかもしれない。
アクセルは、フリー・レッグで回転を生み肩でチェックするが、インサイド・アクセルは
肩で回転を生み、腰でチェックしているような感じだ。


インサイド・アクセル=フォーワード・フリップド・サルコウ?

フライング・キャメル

実は、私は全くキャメル・スピンを練習していない。他のスピンがある程度回れる様になっても
これだけはどうしても駄目だった。最近、就寝前の20回の腹筋運動でついた背筋、腹筋でだいぶ
背筋も伸ばしたまま維持できる様になったし、そろそろキャメル・スピンも練習する時が来たかと思う。
アクセル・ジャンプの練習で体を放りあげる感じの振り上げが出来る様になったので、
ふと試してみるとフライング・キャメルのジャンプ部分は、そこそこ出来るようになっていた。
ここから、デス・ドロップに持って行きたいものである。



デスドロップ

Youtube に良いお手本が出ています。



バタフライ

フライング・キャメルやデス・ドロップなどもそうだが、こういう動きは体操競技に近い技だ。
自分にとっては、走り高跳びのベリーロールに近い技なので親しみが持てる。
4回転ジャンプなどに比べると随分と小技だけど、フィギュア・スケートに華を添える
特徴的な技と言えましょう。
バタフライは、随分前からやりたくて挑戦していたのだけど、腹筋や背筋の不足がかなり
致命的に思えてしばらくはお話にならないくらいだった。
また競技会の映像は、あるのだけどカメラが固定でないことと、周囲に絶対位置を示す
基準がないので、どの方向に振り込んでいるかなど動きも捉えにくかった。
今回参考にしたのは、オリンピック委員会公式記録映画「札幌オリンピック」の一部。
スピンをかなり高い場所(ドガの名画「舞台の踊子」くらいのアングル)で撮影した
部分があり、その導入部分にバタフライが入っていた。
ちなみにこの記録映画は、忍者小説「梟の城」(司馬遼太郎作)を映画化した篠田正浩監督の作品。
これによって、動作も把握出来たので自宅で基本動作の検証とイメージ・トレーニングしながら、
キャメル・スピンを立てるような感じで、とか、腕と肩の振り込みで足は自然と持ち上がるとか
概略の動きを作ってスケート・リンクでやってみたところすぐに出来た。
以下に実演ムービーを示すが、カメラを三脚で固定してあることと、リンクサイドなので絶対位置が
把握し易いので参考になると思う。タイミングがやや取りにくいけれどコツさえつかめれば
そんなに難しい技ではないと思う。例によってこのムービーも左右反転してある。
この映像は、2002年8月のもの


【補足】
まず右足に全体重をかけて滑り出し、左足をイーグルのように開いて
モホーク・ターンの踏み替えをする感じで左足に重心を移して行く、
これと同時に胸を前屈状態になるように振り込んで行く。
これは、左足が氷につく前にかなり振り込みを進めていなければならず
このタイミングを掴むのが難しい。左足は、インサイド、トウにかなり荷重がかかり
胸の振り込みタイミングがピッタリ合えば、不思議なくらい右足がふわっと
浮き上がる。実際にやるとこの浮遊感が素晴らしい。
多くのジャンプが、スリー・ターンとモホーク・ターンのどちらからでも
入れるように、バタフライもスリー・ターンのように踏み替えなしで
入る方法がある。これは、エレーナ・ソコロワがやったのを見た事がある。
また、この技は、キャメル・スピンにも、シット・スピンにもつなぐことができる。

私見だが、この技は、モホーク・ターンから入るサルコウ・ジャンプをやっていたとき
何かの拍子に前屈でやってしまって出来たとしても不思議ではないくらい
足の踏み替えと重心移動に関しては、感覚的に非常に良く似ている。
(走り高跳びの背面跳びが、はさみ跳びの失敗から生まれたように・・・)

他のWebサイトで見つけた、エルビス・ストイコ選手のバタフライの連続技。

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で開く事が出来る。


Youtubeにも出ていた。連続でやっているのは、スターという技。


バタフライを陸上でやるとこんな感じになるらしい


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