恐怖感
上達を遅らせる一番の原因である。本能というより、学習によって学んだある種の先入観である。
時としてそれは危険回避のため無視してはならない重要なものだが、
新しい技術を習得する際には、障害になることが多い。
上達のためには、恐怖感を覚える不安定な領域に果敢に挑戦すべきである。
不安定なものを安定に制御する楽しさが、スケーティングの楽しみであり、
スケーティングの爽快感は、転倒のスリルと常に隣り合わせなのだ。
癖
大半は、保守的な心構え、安易で怠惰な態度によってついてしまう。恐怖心を覚える不安定な動作の中に制御の可能性を見い出し挑戦し、
勇気を出して新しい動きのバリエーション獲得して行く者は、
癖の修正に苦労することはないだろう。
たとえ望ましくない方法を一時的に採用したとしてもそれは動きのバリエーションの
1つに過ぎないのだから。何事も偏らないことだ。
また、技術の壁に阻まれた時は、そこから一度遠ざかってみることだ。
形から入る方法は、良い癖をつけるということに等しい。
新しい技を生み出し、洗練するためには、早期にその型を固めないことだ。
自ずと、最良な形に落ち着くものである。
練習不足もまた、悪い癖を生む原因であり、納得が行くまで練習することだ。
スケーティングの美学
スケーティングには、能動的な側面と受動的な側面がある。強い意志と集中力で動きをコントロールしないと制御を失うが
氷の上の法則には、従順に身を任せなければならない。
この2つの側面の調和こそスケーテングの美学である。
静と動
スケーティングが芸術であり演技であるなら、動を表現するには静(サイレント)を大切にしなければならないことを知るだろう。
人間の感覚は、相対的なものである。
動きのダイナミックレンジを確保してこそ感覚に大きく響く。
単調な繰り返しを避けて、抑揚のある動きをすることだ。
己を知る
芸術的な動きは、体に覚えさせた動きを機械的に再生することではない。常に精神と動きが同調して表裏一体になっていなければならない。
従って、常に自分の動きを意識的に把握して、違和感がないかを知る必要がある。
他人に指摘されるようでは、本当は駄目なのである。
道具の心
靴は、スケーターの命とまで言われる。エッジに全体重を乗せて不安定な動作をこなすのだから、それが不安定だと
転倒したり怪我をする可能性が高い。何よりエッジに体重をかけることが
不安であればそれは演技にも大きく影響する。
また、靴から感じ取る情報も多く、感触を大切にするものであるから
体の一部であるかのようなフィット感が得られることが重要だ。
靴の感触を無視して、安定か不安定かすら気にしない者はスケーティングには向かない。
意識の先行
精神と動作は、表裏一体であることが望ましいが、意識はやや先行して動く。一瞬先で意識が動作を組み立てて動作を行い、感覚がその結果を確認する。
動作も、視線の動き→予備動作→追従動作→フォローという形で進む。
臨機応変
リアルタイムにその時々の情報を察知し、直前の動きを組み立てながら滑る。ある種のアドリブ的な滑りというものは、概して高度なものである。
突如目の前に現れた障害物を回避したり、別のスケーターとの協調動作を果す。
個々に身に付けた技術は、状況に応じて実用的に使いこなせるように幅を広げ
応用が利く様に整えなければならない。
基本的には、逃げたり追いかけたりといったことが出来る自由度があるかということだ。
イメージ
人間の意識は、本来1つのことに集中し、1つのことしか処理できない。複数のことを同時にこなすには、無意識の制御が必要になる。
無意識は、感覚に結びついており、体に覚えさせた動作は、感覚を通じて
複数同時に呼び出すことが可能だ。
感覚レベルでの動きのイメージを抱くことは、調和を保ちながら複数の動きを
同時に把握する鍵である。
魔法使いが、呪文にその魔法のイメージを託して、呪文でそれを呼び起こす様に、
スケーターは、そのトレース・イメージを心に描き、そこから派生するエッジ・ワークと
タイミングをイメージで組み立て滑ることが望ましい。
技の公共性
新しい技が編み出されると、それを記念して最初にその技を行った人の名前がつけられる。その名誉は、その発見が万人にその技を行う自由を許すからこそ与えられるのだ。
技は、公共の財産として、より洗練してみんなで高度な技に発展させるものだ。
正しく理解しなければ身につかないし、技にも完成度やバリエーションがある。
その中で競い、技術を自己表現の道具として活用するものなのだ。
ハングリー精神
より高度な技への憧れ、疑問。そういったものがなければ何も進歩しないだろう。
第一に本人のやる気であり、次にセンスが問われると思う。
何となくでるが、ぎこちない。
何とかできるが安定しない。
安定はしているが、何か不自由である。
もっと滑らかに。
もっと力強く。
力を入れても空振りに終わる。
とにかく、納得が行かない。
自分がやりたい技は、まだまだこんなものではない。
無駄のない最大効率な滑り方は・・・
こういった事を、考え、練習するのだ。
表現は余裕から生まれる
余裕は、基礎的な技術から得られる。スケーティングは、不安定だから何かに頼ろうとする気持ちが働く。
しかし、安心の中に閉じこもっていては表現は生まれない。
手摺にしがみつきたくなるような欲求を克服して、自転車の手放し運転を
する様な余裕が欲しい。
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