氷忍者流・スリー・ジャンプの手ほどき

はじめに

スケート教室で出来なかった人に、何とか出来る様になるヒントはないかとよく考える。
こう書くと、スケート関係者を批判する様だが、ここでは出来ないのは出来ない本人のせいだ、
ということにしておこう。
生まれつきの運動音痴、運動神経や反射神経の不足、歩く時右足が前の時右手が前に出る人、
指導を受けると決まってタイミングを外す人、言ったことを守らない人、勇気のない人、
両手を広げて滑るのすら恥ずかしい人、集中力が足りない人、消極的な人、練習しない人・・・等々。
ここでは、氷忍者流の重心外しの流儀から、スリー・ジャンプが出来るようになる道を
模索してみようと思う。
同じ山を登るのに、登山道は幾つもある訳だし、新しいものを開拓してもいいだろう。
人によって偶然出来るものは違うし、容易なことと難しいことは驚くほど違う。
ただし、この記事は氷忍者流であって、一般のフィギュア・スケートとは違うので御注意してもらおう。
フィギュア・スケートは、とにかく重心をエッジに正しく乗せるとか背筋を伸ばすとか、
そういうことを厳しく教えられるようで、わざと重心を外すなどはとんでもないことなのだ。
ということで、落ちこぼれた人だけに見て欲しい。
また、私の場合、転びながらスリー・ジャンプを習得して来た訳で、私と同じ方法で教える、
などということをここで言ってもしょうがないわけで、ここでは転ばなくていい方法を模索する。

基礎的な要素をチェック

いきなり、勇気を出してスリー・ジャンプをやってみよう、といっても
ツルンと滑ってとても危険です。
いくら転ぶことが趣味の氷忍者でもそういう教え方はしません。
そこで、まず基礎的なことをチェックすることにしましょう。
1. 踏み切り時に正しくアウトサイド・エッジに乗れているか。
2. 踏み切り時にエッジがターンと同様のグリップを得ているか。
3. 着氷後すぐにエッジで体を支えられるか。
これらが出来ていないなら、基礎からやり直しです。
自分が得意とする分野を中心に基礎的な分野へと練習を広げる必要があります。

練習方法

氷忍者流では、正しく重心をエッジに乗せるのではなく、遠心力でエッジに乗るという
発想を基本としています。故に、これが出来ないと転ぶしかありません。
カーブの曲率が変わると当然受ける方向も変わるし、それを足掛かりに感覚的に
習得しようとすれば、正しい練習方法の何倍も時間がかかります。
少し曲率が違っただけでも大きな違いが出て来るのです。
しかし、そういう観点でフィギュア・スケートを見るとジャンプは、
有効な重心移動なしでは出来ないと分かります。
例えば、トリプル・ジャンプをしたときエッジに体重の3倍の荷重がかかるということは、
2/3までが、助走の制動力、つまり遠心力になるのです。
もちろん体重を正しく支えていることが基礎になりますが、それを忠実に守っただけでは
ジャンプは出来ないのです。
活発な子は、注意しないと間違いなく重心を外そうとします。だから厳しく注意すべきです。
しかし、基礎に対して忠実過ぎる人は重心を外さず、そのために必要な制動に対するセンスを
養うことが出来ないのではないかと思います。
ともかく、ここでは氷忍者としては不本意ではあるけれども、転んでは仕方ないので
重心をうまく乗せたまま最少限の重心移動でジャンプを達成するということを考えましょう。
まず、腰を入れてセミサークルを滑走し、ターンしそうなくらいギリギリの遠心力を
保って鍛えます。これはこれで出来る様になって下さい。
アウトサイド・エッジに正しく乗るために直径3mくらいの小さな円を前進クロスオーバーで
反時計回りに滑走して下さい。このときクロスしないで縦にブレードを踏み替えたり、
1秒〜2秒片足(特に左足)で滑るような練習をして下さい。
このとき、セミサークルでの滑走と同様にエッジに重心をしっかり乗せてエッジが
氷に食い込むくらいのグリップ感が得られればしめたものです。
また、着氷時のエッジの受けをアウトサイドできちんと受けるために同様に直径3mくらいの
小さな円をバック・クロスオーバーで回って、出来れば右足滑走のバック・スパイラルの
姿勢を保てる様にして下さい。
どちらのクロスオーバーも、滑走しながら膝は適度に屈伸できるようになって下さい。
クロスオーバーで小円を回る時は、体を傾けますが、これは自転車と同様です。
スニーカーを履いて、地面を同様にクロスオーバーで走っても練習出来ます。
遠心力を体を傾けて受ける感覚はとても大切なのでよく味わって下さい。
 スケートの楽しさは、Gの要素を体感することにあると思うのだけどなあ・・・。
これで滑走要素は足りると思います。
さて、次の段階です。
しかし、まだジャンプはしません。
空中での重心移動をまず、ジャンプしないで感覚的に覚えるべきでしょう。
スリー・ジャンプは、スリー・ターンと同じ動作ですから、スリー・ターンをやります。
ここでは、重心を外した大袈裟なスリー・ターンを習得してもらいます。
以下のムービーがそのスリー・ターンです。演技者は、長方形の板です。

 スリーターンのモチーフ

ここで重要なのが、エッジを乗り越えるということ。
本来、ターンというのは前方から後方、またはその逆に半回転するのが目的で、
それを反動なく、いかに瞬時に滑らかに行うかということが目的であり、
その主旨からするとこのターンは、とてもムダで大袈裟で役に立ちません。
しかし、ワルツのステップを抑揚をつけて踏んだり、ジャンプの練習用に使うには有益です。
スリー・ターンは、極のところで一旦エッジがロックします。
そのエッジを回転中心として腰が感性の力で振り子のように振られてエッジを乗り越えます。
このときのエッジのグリップと重心がエッジを乗り越える感覚が重要になります。
手摺を使って大きく体を傾けて、スリー・ターンを行い、エッジを乗り越え体を翻すような
感覚を覚えて下さい。
まずは、RFI→RBOのスリー・ターン。
インサイドから入るので比較的簡単です。
左足をいつでも氷につけるようにして補助として待機させると体を傾ける恐怖心が
少なくなるでしょう。これでターンしないで、ターンの極でエッジを半ば乗り越えつつ
そのまま立ち止まるというのが出来る様に練習するといいでしょう。
腕も使って腰と肩の捻りでターンをします。
このとき腰を明確に入れて背筋を立てないと、腕や肩によるチェック動作で
エッジに緊張感が保てません。反時計回りのターンでは、肩をやや右に捻る方向で
チェックして入り、エッジのグリップを一定以上に保ちながらチェックをほどいて
ターンします。グリップ力は、ターンによってカーブの曲率が大きくなると共に
大きくなるので肩の回転は途中から加速します。
失敗し時、回転が強過ぎたり不足した時にうまく受け流せる様にすることも大切です。
スリー・ターンの一つの難関は、後半にどの角度で抜くかという部分にあります。
しっかりと体重をアウトサイド・エッジで支えられる角度で抜ければOK。
最初はターン後にその角度のアウトサイド・エッジで体重が支えられるなど
信じられない不思議な感じなのでうまく回転をチェックしながら探し当てて下さい。
これがそのまま着氷してからのエッジの受けになります。
ターンでも、ジャンプと同様のフィニッシュ姿勢をつけるといいでしょう。
次のターンは、LFO→LBIのターン。
RFI→RBOが出来ていれば、腰から上の動きはほぼ同じです。
これは、アウトサイドから入るので若干難しくなります。
左足を右に押し込むようにすると体を倒す角度が僅かで済みますが、これが
フォームとして安定するには、しっかりとエッジで荷重を受けた練習を繰り返す
必要があります。
これを満たす最も簡単な方法は、バックから振り返って踏み出すことです。
うまく乗れたら、ターン後に右足を補助にして支えてもいいでしょう。
この動作を内股のLFO→RBOの踏み替え2本足ターンで練習するといいかもしれません。
エッジを乗り越える感覚を、ゴム床の上でいいのでやってみることです。
氷の上で出来る様になったらLFO→LBI後RBOに踏み替えにして下さい。
踏み替えして重心移動すると共に、肩を捻るその感覚を調整しながら。
ジャンプの踏み切りは一瞬ではありません。
スラスティング動作が蹴るではなく、押すと言われるのと同様に、グッと踏みしめる
というのがジャンプの踏み切りです。
ターン動作でジャンプを疑似体験するには、膝を曲げてターンに入り、重心がエッジを
乗り越えている感覚の時膝を伸ばすことです。
スリー・ジャンプでは、肩の回転よりもフリー・レッグの振り出しが支配的です。
このために、スリー・ターンの極の手前でエッジが同様にグリップします。
とにかく、最初は胸を踏み切り足に被せるような感じでエッジを乗り越えるようにすると
ツルンと行くことはないと思います。

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